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和歌山県の河川で採集したヌマエビ南部種日本列島集団です。
ヤマトヌマエビの記事で、3枚目の個体です。4枚目も4個体がこの種類かな。
この長い和名は何や。と思われた方は、ヌマエビ類の考察をご笑覧下さい。
学名は Paratya compressa としたら、単純で楽なんだけど、
そこまで言及できる材料が無いので、 P. sp. か P. c. subsp. でしょうね。

旧来のヌマエビとヌカエビは、隠蔽種群としておくのが、一番な気もします。
ヌマエビ種群 Paratya compressa species complex です。
分布と生態が最大の特徴で、形態からは同定できないし、これは何々だなんて、
確りした根拠が無いので、怖くて言えません。言う方は重宝がられるでしょうが…。
カワリヌマエビ属の一種に見習って、ヌマエビ属の一種という表記も良いでしょうね。

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額角の写真も貼っておきます。
ヌマエビ種群の同定に使えるかすら分からないですが…。

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上からです。どうしても模様や色に目が行きますが、模様は標本にしても不変なものと、
生体だから発現するものとがあり、後者は決定的ではなく、傾向的な特徴なことが多く、
そこばかりに注目すると、誤同定や迷宮入りします。でも同定したくなりますよね。
ここまで難解なものは、無理に同定する必要ないんです。未同定はむしろカッコイイです。
何も分からないからではなく、わかっているからこそ、未同定にするのですから。


追記 2013年1月31日
日本列島集団と琉球列島集団は遺伝的距離が近いため、
あえて集団名を書く必要はないと判断しました。
南部種を池田氏の示し方に従い、南部グループと改めました。

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ヌマエビの記事に、にいつまさん(2013/01/11)から、ヌカエビというご指摘を頂きました。
写真は同じ個体です。調べれば調べるほど、厄介な状態みたいで、しんどかったです。
これがヌマエビかヌカエビか、それも大事ですが、ここでは考察を楽しみたいと思います。
オガサワラヌマエビのことは、異所的な別種なため、ここでは考えないことにします。

日本産ヌマエビの地理的分布と種内分化に関する遺伝学的研究(1994年)
↑まとめを抜粋「日本産ヌマエビは遺伝的に均一な集団として存在するのではなく、
遺伝的および形態的に分化した北部、中部、南部の3大グループに分けられ、
これらの3大グループは亜種レベル以上に分化した10の地域集団から構成され、
さらにそれぞれの地域集団は各地に独立した繁殖集団より構成される
という階層構造を持つことが示された。」とあります。

ここで言う3大グループとは、種を指していると思われます。図4を見て下さい。
すなわち、ヌマエビ北部種(2亜種)、ヌマエビ中部種(7亜種)、ヌマエビ南部種(亜種なし)。
2年後に同じ方が出された論文↓に名称が記されていました。
Genetic and morphological analysis of...omitted(1996年)
ヌマエビ属
├ヌマエビ北部種
│├日本海集団
│└太平洋集団
├ヌマエビ中部種
│├関東集団
│├北陸集団
│├山陰集団
│├周枳集団
│├東海集団
│├高岡集団
│└琵琶湖集団
└ヌマエビ南部種
日本産(小笠原除く)ヌマエビ属は、3種9集団(亜種)に相当するものがいるようです。

このため旧来のヌマエビ Paratya compressa compressa
ヌカエビ P. c. improvisa という1種2亜種の関係では示せず、
ヌマエビ南部種はヌマエビ P. compressa とし、
ヌマエビ北部種はヌカエビ P. improvisa とし、
2種として扱うことが増えたのだと思います。分布的に重なるところがあるため、
同所的な亜種関係はありえず、形態的差異が小さくても、2種とするのは当然ですね。

そして日本産(小笠原除く)ヌマエビ属を、ヌマエビとヌカエビという2種にする場合は、
ヌマエビ中部種は別種だが、遺伝的にどちらかといえば、ヌカエビに近縁なため、
第3の種として P. sp. とはせず、ヌカエビにまとめてしまっているのでしょう。

それでは3種いることが判明しているのに、なぜ20年近く経っても混乱しているのか。
おそらくヌマエビ中部種が、遺伝的に判別可能でも、分類学的には形態的差異が必要で、
ヌマエビとヌカエビの模式標本を検証できたとしても、3種のうちどれに該当するか、
判別が難しくて、放置されているのが現状かなと想像します。分類学あるあるですね。

さて、私の見解が正しければ、冒頭のこれが最も的に近いのは、
ヌマエビ中部種琵琶湖集団 P. sp. subsp. ということです。

ちなみに、琵琶湖でヌカエビの記録は見たことがありません。おそらく無いでしょう。
琵琶湖生物多様性画像データベースでもヌマエビだけ記されています。
また、滋賀県RDB(2010年版)では、ヌマエビ P. c. compressa とし、
亜種としてヌカエビ P. c. improvisa という旧来の説明が書かれています。

これは20年近く前の論文を知らないのでしょうか。この2つを書かれた西野先生は、
面識があり、論文もいつくか拝読しましたが、普通に考えると、ありえないです。
そう考えると、分類学的にカオスなため、無難に旧来の分類に、従ったのだと想像します。
学名の変更が記された論文はないはずで、旧来の分類は今なお生き続けているため、
学名の未確定な情報の扱いを無視するのは、ある意味ではこれも正しいと思います。

結局は何に従うかです。その判断は個々にあります。
私はヌマエビ中部種琵琶湖集団 P. sp. subsp. と暫定結論することにしました。
これはヌカエビとご指摘下さった、にいつまさんが間違っているとかではありません。
現段階では正解が複数あり、様々なことを鑑みて、その選択の1つとして判断しました。

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これは1枚目の写真と同じ場所で、同じ日に捕れたカワリヌマエビ属の一種です。
先日もエビ2種を県指定外来種に追加へという記事がありました。
「琵琶湖在来のヌマエビ」と記されていますね。わかりやすくていいなぁ…。

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ヤマトヌマエビの記事で、たぶんミゾレヌマエビと書いた個体です。
今見ると、どこがミゾレだと、言いたくなります。気にはなっていたんですと言い訳。
これはヌマエビ南部種だと思います。ヌマエビ記事の訂正と、新記事を近々に作ります。
本来であれば専門屋さんに、同定依頼をお願して、客観的な判断を仰ぐところですが、
淡水甲殻類屋さんに、知り合いがほとんどいないことに気付きました。。。疲れました。
(ヌマエビ類の考察2へつづく)

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愛知県の海で採集したアシナガモエビモドキです。
「エビラ 対 エビラ 女の大決闘」 どっちが勝ってもエビラの勝ちです。

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抱卵数対決。1つ、2つ、3つ...200つ、まだたくさんぶら下がっている、赤が優勢か。

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上から対決。あなたアシナガモエビじゃないのっ。あなたこそ。

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琵琶湖の湖岸で採集したヌマエビです。
川や湖でスジエビやテナガエビ以外のエビちゃんが捕れると、
たいていヌマエビ(詳しい人はヌカエビと言ったり)として片付ける人も多いと思います。
その多くがヌマエビではなかったりします。ヌマエビは意外と少ないです。

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非常に見づらいですが、額角というリーゼントみたいな部分に細かい棘があり、
それが眼より左側まで伸びています。また、その額角と両眼の間に、1対の棘があります。
これを確認しないと、ヌマエビだとは言えないようです。ちょっとした角度によって、
見えなかったりするので、色々な角度から撮って、確認するしかないのかも。

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琵琶湖にエビちゃんは、アメリカザリガニ、スジエビ、テナガエビ(移入?)、
ミナミヌマエビ(絶滅)、カワリヌマエビ属の一種(移入)、ヌマエビが確認されています。
この中ではおそらくヌマエビが探すと一番見つかり難いと思います。

ヌマエビのように名前はよく知っているけど、実はあまり見かけない生物は結構いますね。
カワニナ科にもいて、それはカワニナです。縦肋(ヒダ)のないチリメンカワニナが多く、
愛知県でカワニナをかなり探したのですが、1個体も捕ることが出来ませんでした。
縦肋のないチリメンカワニナは山ほど採集。そのカワニナは本当にカワニナですか…。


追記 2013年1月20日
にいつまさんにヌカエビと教えて頂きました(感謝)。
その後にヌマエビ類の考察により、ヌマエビ中部種琵琶湖集団としました。
更に中部種琵琶湖集団を池田氏の示し方に従い、北部-中部グループ琵琶湖型と改めました。

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2005年1月に琵琶湖北湖流入河川の河口域で採集したカワリヌマエビ属の一種です。
以前ここに少し書いたのですが、日本産カワリヌマエビ属は、もう無茶苦茶みたいです。
釣り餌や観賞用で、中国や韓国から輸入され、それが放流などによって日本に侵入し、
あちこちに見られるようになり、しかも近縁なミナミヌマエビと交雑しているようです。
タイトルをカワリヌマエビ属の一種とだけして、(未同定)としなかったのは、
複数の近縁な種類が入っているそうなので、それらが複雑に交雑している疑いもあり、
まず同定は不可能です。これはシナヌマエビだよ。なんていう回答は出来ないからです。

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これは琵琶湖とは関係の低い、滋賀県南部の河川で採集した個体です。
どうしてここにいるんだろうと思ってしまいますが、人ってどこでも放すからなぁ。
本家の写真掲示板2000年10年10日に書いたことですが、夜に川で採集をしていたら、
クロダイ釣りの餌で、スジエビを捕っている人がいて、その方の話だと、
「スジエビをここで捕ることもあるのですが、釣具屋で買って余ったスジエビも
ここに逃がしてあげるんですよ。捕った分はお返ししているんです。」と言ってました。
私も小さい頃に命を大切に、という教育を受けてきましたが、放流が他の命を奪ったり、
遺伝子汚染することまでは、習いませんでした。無条件に命を大切にだけではアカンわ。
在来スジエビを守るために、釣具屋で買ったスジエビは飼うか殺すのが、正解でしょうね。

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埼玉県の河川産です。最初に捕ったときは、分布からヌカエビかと思いました。
本来はミナミヌマエビやカワリヌマエビ属の一種は埼玉県に分布しません。
よく見たら前側角部に棘がありました。そのためヌカエビではないです。

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これも同じ埼玉県産です。外来生物ですね。ちなみに、外来生物という表記の話。
外来種で良いのではないか? と思われるかもしれませんが、これは正確ではないのです。
外来種は外来(外国から来た)+種という意味です。これだと亜種以下には使えません。
ミナミヌマエビの学名は Neocaridina denticulata denticulata で基亜種です。
シナヌマエビの学名は Neocaridina denticulata sinensis です。
これはミナミヌマエビ種 N. d. の中に、シナヌマエビ sinensis という亜種が、
存在するということです。種と亜種は異なります。詳しく書くと長いのでここでは割愛。

仮に埼玉県のエビちゃんがシナヌマエビであれば、外来種ではなく外来亜種と、
表記する必要があります。種としてはシナヌマエビとミナミヌマエビは同種なので、
シナヌマエビが日本に入ったとしても、それは外来種にはならないのです。
そういう使い難さもあって、近年は外来種を止め、外来生物という表記が増えています。
他に外来エビや外来魚などは、分類学的な単位ではないため、使いやすい表記ですね。

それではミナミヌマエビとシナヌマエビは、どう表現すれば良いのか。2種は間違いです。
1種2亜種です。何か3種いる感じがしますね。でもこれが正しい書き方なんですよ。
しかし、これではわかり難いので、2種類とすれば良いのです。種類というのは、
種・亜種・型などを含む1つのまとまりなため、とても便利な表記だと思います。
ようするに、カタカナの和名があるものは、種と亜種の2つがあるのです。
そのため、全て種だけだと解釈して、ごっちゃに扱うと、良くないということです。
種名、別種、魚種などは、本当に種のことですか。違うならば種類にしておきましょう。
そういう私も徹底しているかと言われれば、気を付けている程度なんですけどね…。

さて、そうなると「カワリヌマエビ属の一種」は、種だけで亜種以下は含まないのか?
いいえ、一種というのは、一つの種を表すものではなく、一つの種類という熟語なのです。
そのため、カワリヌマエビ属の一種は、カワリヌマエビ属の種類という意味になります。
しばしば、この「一種」は「1種」でも同じだと誤解されています。書籍によっては、
「サラサハゼ属の1種-1」とよくわからない表記があります。これは間違いです。
正しくは「サラサハゼ属の一種-1」。サラサハゼ属を2種確認。サラサハゼ属を2種とした。
などはアラビア数字でも使えますが「サラサハゼ属の2種」という複数の表記はないです。
一種は一応、一概、一兵卒と同じ仲間です。2応、2概、2兵卒なんて使わないですよね。
そんなことより西村は誤字脱字をもっと減らせ、というご指摘はごもっともです(笑)。