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琵琶湖の湖岸で撮影したタンスイカイメン科の一種です。
普通にヌマカイメンかもしれませんが、群体だけでの同定は無理なので未同定。

散々使って来た「湖岸(こがん)」という言葉ですが、いつも違和感がありました。
カワニナ採集で用いる場合は、だいたい「水際から沖へ500m程度までの範囲」です。
それより遠くは「沖合」です。水のある場所です。水がないとカワニナはいませんからね。
しかし、琵琶湖を取り囲むように「湖岸道路」というのがあります。水のない場所です。
湖岸に咲く桜。なんて表現もあります。桜は時に高波で、水がかぶることもあるため、
中間的な場所とも言えます。琵琶湖の湖岸って、どこからどこまでなのか?
人や状況などによって、捉え方が違う、曖昧な表現かもしれないと思えてきました。

デジタル大辞泉で調べると…。湖岸は「みずうみのきし」。
きしは「陸地の、海・川・湖などの水に接している所。みずぎわ」です。
ようするに、琵琶湖の湖岸とは「陸地に琵琶湖の水が接する所」です。
水は確実にある場所ですので、湖岸道路というのは、誤った表現だと言えます。
言い換えるならば、陸をよりイメージしやすい、湖畔道路が良いかもしれません。
水が接する所は、陸と水の境界なので、線で引けちゃう、非常に狭い範囲です。
フトマキカワニナは、記載論文に琵琶湖北湖の東岸に、分布するとされていますが、
陸と水の境界には居ないに等しく、もっと沖にいるため、これも誤った表現です。

文献によっては、岸を水深によって、区別しているものがあります。
水深が湖岸0~1.5m、沿岸1.5~10m、亜沿岸10~30m、深底30m以上のような感じです。
これは一見わかりやすいですが、沖の白石周辺は、陸と水の境界は深くて、いきなり沿岸。
近江八幡市などは、浅い場所が沖の方まで広がっており、5kmくらい先でも沿岸となります。
5km地先に岸と付く表現はちょっとおかしいです。これも取り扱い注意の表現です。

普通の会話で、湖岸という使い方が変であっても、この表現自体が曖昧であるため、
間違いだと指摘するのは、行き過ぎだと思います。しかし、生物の生息状況を記す場合、
湖岸という言葉を使うのは、注釈が要ると思います。カワニナ図鑑も追記しないとね…。

タケシマカワニナは多景島に分布するとされていますが、これは間違った表現です。
多景島は陸なので棲めません。多景島周辺の琵琶湖にいます。シライシカワニナも同じで、
沖の白石にはおらず、沖の白石周辺の琵琶湖にいます。日本語に多い曖昧表現は、
普段の会話では、当たり障りなくて良いですが、厳密さが必要になると使い難いですね。

コメント一覧

Nao - 2011/10/23 (日) 10:16 edit

なるほど全くですね。大変勉強になります。

西村 メール - 2011/10/23 (日) 12:27 edit

Naoさん。コメントありがとうございます。
いえいえ。えらそーに書いちゃっていますが、結局は答えが導き出せなかったため、
あーだこーだと書き並べて、なんとなくそれっぽくしているだけです(汗)。
ちなみに、湖岸道路はさざなみ街道の愛称が付けられ、波が道路にありそうです(笑)。
それと琵琶湖には湖周道路もありますが、それを走っても湖を周ることは出来ません。