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沖の白石周辺の岩礁湖岸で9人で採集したシライシカワニナです!!!!!
この種は琵琶湖の沖の白石周辺の岩礁湖岸にしか分布しないため、
必然的に生息地公開になってしまい、隠せないので例外として書きました。
カワニナ類の中で、最も局所的分布で、極めて貴重な種類です。

15年くらい前。某テレビ番組で、沖の白石へカヌーで行く企画が、放送されていました。
一行はそこへ向かう前に、竹生島行きの乗船場で、琵○博のMさん(貝類研究者)に出会い、
沖の白石にはシライシカワニナという、沖の白石にしかいないカワニナがいて、
最近、新種記載されたばかりだから、見て来ると良いという話をされていました。
私は沖の白石がどんなところか、あまり深く知りませんでしたが、
一行が長時間カヌーを漕ぎ、沖の白石へ到着した画を見て、とても驚きました。
こんな狭い範囲の岩に、ここにしかいない新種がいるだとぉ!? 信じられませんでした。
テレビカメラが岩沿いに、水中へ入って行くと、僅かにシライシカワニナがいました。
この超~っ局所的分布のシライシカワニナとは何なんだろう。こんな岩で隔離され、
種分化したというのか、考えれば考えるほど、ありえなさが気になってきました。
そのテレビ番組の一行が羨ましく、シライシが捕りたいと思うようになりました。

「湖国びわ湖の魚たち」という本の表紙は沖の白石ですが、それを見る度に、
ここには、ここにしかいない、シライシカワニナがいるんだ。そう思って見ていました。
このモヤモヤ感は一時期は無くなりましたが、今年4月に湖岸でカゴメカワニナを捕り、
それがきっかけで、シライシカワニナのことを思い出し、貝類図鑑などを読み返すと、
だんだんカワニナ類を全て捕りたくなってきました。当然これまで夢だった、
シライシカワニナも狙おうと思いましたが、潜って捕るしかないと考え始め、
4月はまだ水が冷たいので真夏に行こう。それまでに湖岸で捕れるものは捕ろう。
そういう気持ちになりました。次第に日淡そっちのけで、カワニナ類へ嵌って行きました。

そして、多くの方の協力で、7月時点で残るのは、深湖シリーズのカゴメ(粒無)と、
離島シリーズ(シライシ・タケシマ・チクブ・モリ)だけになりました。
7月25日とうとう沖の白石で、夢のシライシカワニナを狙うことになったのです。

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色々ありましたが沖の白石の前へ来ました。海パンとシュノーケルと足ヒレを装着。
もう飛び込むしかありません。シュノーケリングは子供の頃に1度して、
使いこなせなかったので、非常に不安がありました。足ヒレは初めてです。
どぼーん。おもっきり湖水を飲みました。水泳やっていた癖で、沈みかけると、
足が勝手に平泳ぎしようとします。足ヒレの使い方としては全く駄目です。
何とか沖の白石にしがみ付き、pさんに死なないよう、見ておいてとお願いしました。
巣潜りに慣れた人は、我先にとシライシを探しています。そんな中でpさんには感謝です。
それから20分もすると、だんだん慣れてきて、潜ることも出来るようになりました。
湖流の怖さもS先生から伺っていたため、下手にあちこち大幅な移動は出来ません。
船から見守る役をして下さった方と、とりあえず交代することにしました。

皆さんなかなか見つからず、時間ばかり過ぎ、諦めるという選択も頭に浮かびました。
そんなときpさんが、これは何だろうと、私のいる船へ持って来ました。
小さなカワニナ類でした。私は見てすぐ、あれっ?ハベ系に見えるけど、
沖の白石にはハベ系はいないはずだけどなぁ。う~ん。なんだこれっと言いました。
でも、図鑑などと見比べると、なんとなくシライシにも見えるなぁと…。
十中八九シライシ。これはすごいかもっ。さすがpさん。テンションが上がりました。
そのすぐ後で、tさんが大きな個体を、狭い範囲で2個体も捕ったと言っています。
船で休んでいた私とuさんは、すぐ戦闘準備に入り、目の色が変わって、どぼーん。

tさんが捕ったあたりを探すことに。他の人も集まって、ぽつぽつと捕れ出しました。
私は何度か潜っても見つけられず、水深3.5mくらいで、闇雲に岩を触ってみました。
何か2つほど手に当たりました。その1つを確り掴んで、水面に顔を出して確認すると、
間違いなくシライシカワニナだったのです。それも立派な個体です。キター!!
そんなありふれた表現では、表せないほどの、満足感が充満してきました。
まさに夢が叶った瞬間です。このために色々と苦労し、命がけで挑みました。

しかし、そこは危険な場所だったので、すぐに安全な場所へ移動しました。
すぐに皆さんに捕れたものを見せると、一緒に喜んでくれました。本当にありがとーう。
これも多くの方にお世話になったお陰です。この1個体を捕ってから、
すぐ捕る気力がなくなり、捕れていない人への、サポートへ回る事にしました。
それでも捕れなかった人もいました。やっぱり簡単に捕れるものではなかったです。

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全16個体が捕れました。9人でこの数です。中には潜ることに長けた人もいます。
凪で湖流の弱い、とても良い条件下で、9人でほとんどの場所を探しました。
まとまっていたのは1箇所だけ。生息している水深は2.5m以上だと思います。
「日本産淡水貝類図鑑1」によると水深8.5mまでいるようですから、
我々はそこまで深く潜れていません。たぶん深いところに多いのかもしれません。

カワニナ類の繁殖力と成長の早さは、淡水魚とは比較にならないものがあるため、
今回の16個体が乱獲であったり、種の存続を脅かすものでは、無いと思っています。
また、琵琶湖は水中ボンペを使用しての採集は禁止されているのと、
素潜りはせいぜい5mの深さしか潜れませんし、体力的にも長時間は辛いです。
それと地図を見てわかったのは、沖の白石周辺は南北に細長い1.5kmほどの、
浅場(と言っても深い)があり、海綿などを主に食べていれば、そこでも生活して
いるのではないかと思えました。そもそも本当に沖の白石にしかいないのだろうか…。
とにかく、これからもシライシが生息できる、琵琶湖であって欲しいと願っています。

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軟体部の写真です。下の写真は中央シライシカワニナで、両脇タケシマカワニナです。
S先生によると、タケシマはハベ系だが、シライシはシライシ系だそうです。
ようするに、シライシは完全な独立種だそうです。事実であればより貴重です。
私が捕る前は、数少ない図鑑の写真などを見て、たいてい細長い個体が載っていたため、
タテヒダ系だと思っていました。確かに細長くてタテヒダ系な個体も捕れています。
更にカゴメ系のように、もこもとと各層が膨らんでいる個体もいました。
ハベ系もいます。この統一感の無いぶれは、まさにハベ系なのだと思いました。

それにシライシはタケシマと良く似ています。私は同種内の地域変異に見えました。
螺肋と顆粒が弱いタケシマ、螺肋と顆粒が強いシライシ。微妙な差です。
この関係は、肋のあるハベカワニナ、肋の無いフトマキカワニナに近いです。
これを独立種とするか、ハベ系の著しい多様性と捉えるか、まだまだ奥が深いです。

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塩茹で2分。爪楊枝で掘り出しました。胎殻は外しました。
歯応えは良い。やや苦味があるが、不味くもなく、美味しくもなくという感じでした。
前にタケシマカワニナの貝殻1つが、1万2500円で売れていたと紹介しましたが、
これまでシライシが売られていた例はないと思います。想像すると3~5万円くらいか(怖)。

ひとまず、7月25日のネタは全て放出しました。これまで気を使ってもらって、
自分のブログなどに、このネタを書かずに待って下さった方には、お心遣いに感謝します。
とにかく命がけで捕れました。改めて多くの方へ感謝の気持ちを表したいです。
ありがとうございました。そして最後?に残ったモリカワニナ。これはまた狙います…。
シライシ捕った時点で、私の夢は叶ったのですが、ここまで来たらコンプリート狙います!

コメント一覧

maiky - 2010/08/02 (月) 10:26 edit

シライシ出ましたね!!見つけた時は本当に感動しました。
最高です。Pさんが見つけた時テンションが物凄く上がったのを
覚えています。とにかくカッチョいいカワニナでした。
あとは…モリっすね!シリーズ完結まであと少し、陰ながら応援しています!

ペイル メール URL - 2010/08/02 (月) 18:11 edit

自分のシライシを捕った時のテンションの上がり方は異常でした(笑)
一度、チクブとシライシを一緒に見てチクブだけを採取して水上に上がりました(その時、シライシがどんなものかはっきりとわかってなかったです・・・)。
しかし、その後、シライシの場所がどこかわからなくなってしまい、とても悔しかったです。
だからこそ、必死に探した結果がシライシの採取に繋がったと思います。
西村さんがシライシかどうか調べているときは「シライシ来い!シライシ来い!」と、ドキドキでした(笑)
何度思い返しても、とても楽しい一日でした!
皆さん、ありがとうございました!

スギタ - 2010/08/02 (月) 20:15 edit

完結編すごい盛り上がりですね!
今回の一連のお話全て楽しく読ませていただきました。
参加された皆様、お疲れさまでした。
次回も波瀾万丈になってしまうのでしょうか(笑)
期待しながらお持ちしています!

かっちゃん メール URL - 2010/08/02 (月) 23:30 edit

改めて思いのたけを聞かせていただきました。
シライシカワニナとは、そんないきさつがあったんですね。
まだ1種残っているのは、琵琶湖の守り神がもう1回お出でと言っているのかもしれませんよ。(笑)
とりあえず、行くところまで行くしかないでしょう。
コンプリート宣言が出る日を楽しみにしております。

つっちぃ - 2010/08/03 (火) 19:38 edit

こんばんは。
天候も良く、綺麗な写真が素晴しいです。
4つめの岩があまり出ていない所を見ますと、水位は少し高めのようですね。
彼らは、昼間は岩の隙間なんかに隠れている事が多いのと、少々深いところにいます。
垂直分布の幅は当然、年や時期によっても変動はしていますが。
怖いですけど、夜間にここに潜ったらカワニナはどうしているのか、ぞろぞろ出てきているのか、ちょっと見てみたいです。
あと、アオミドロ類を嫌う傾向があるのかどうかわかりませんが、これが付着している岩の表面では、経験的に個体密度が少ないような気がします。

シライシカワニナは、縫合がよくくびれるタイプが大型化しますので、
このタイプの稚貝を上手く飼育して殻頂を保存できれば、相当大きい個体に育つと思います。過去に飼育したのは死滅しちゃいましたが、半年で5ミリ、殻径0.7ミリ程度成長していました。

ゆう URL - 2010/08/04 (水) 00:21 edit

あれ?何か違和感が・・・
と思ったら、トップの写真が白石だったっけ?
いやぁ~ホントかっちょいいです。
今回の成果、探究心の賜物ですね。
また、武勇伝を楽しみにしております。
※流血はしなくていいですよ~

西村 メール - 2010/08/07 (土) 11:19 edit

コメントありがとうございます。ご返信が遅くなって申し訳ありません。

maikyさん。近いうちにモリ頑張りましょーう。絶対にモリを食ったるぞ!
シリーズ完結したら、どういう気持ちになるんだろうなぁ、と思ったりも。

ペイルさん。最初にシライシを見つけたのに、シライシの場所がわからなくなって、
最初にシライシを捕って、その後にシライシを琵琶湖に漂流させたのは、
やっぱりペイルさ~ん♪って言いたくなります。ペイルさんは今回も大活躍でした。

スギタさん。次回も波乱万丈って。それを期待されると、何か危険なエピソードを
作らないといけない気になってきますが、死なない程度に無茶をするのがモットーです。

かっちゃんさん。モリカワニナを捕ってもコンプリート宣言はちょっと微妙です。
カゴメ粒無(本当にカゴメ粒有とは別種?)の存在があるので、これは深湖シリーズなので、
水深20mとかそのあたりを、どうやって捕ろうかと。かなり難しいですね。

つっちぃさん。水位は琵琶湖河川事務所のサイトによると-17cmだったようです。
7月は-20cm前後に保つようにしているようです。2007年8月に行かれませんでしたか。
そのときは-35cm前後のようです。記憶では橿○水族館に前は載っていたような…。
また色々と教えて下さい。後1~2回はカワニナ記事が出るはずです(笑)。

ゆうさん。トップの写真は白石に変えました。以前のはプロフィールに移しました。
流血はもういいかな。モリカワニナを捕って、過って踏み潰すとか、ありそうなだなぁ。

7月25日の採集関連で、温かいコメントをたくさん頂き、本当にありがとうございました。