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三重県の汽水域で採集したタカノケフサイソガニです。
タカノケフサイソガニは汽水域を代表するカニさんで、
「そんなもんどこでもおるて」という感じ。石を引っくり返すとうじゃうじゃと。
エピソードも多くて、どのネタを出そうか迷うほどです。

よく似たケフサイソガニとの違いがわかって、記載にされたのはまだ数年前のことで、
当時はタカノケフサイソガニとネット検索しても、某サイトと日淡会の2つだけでした。
今ではたくさん。というのも、和名発表される前にネットに出ていたからです。
記載者に伺ったところ、和名が発表される前に、学会で口頭発表していた名前が、
タカノケフサイソガニだったそうで、それを某サイトが勝手に使っていたのです。
結果として口頭発表と論文発表が同じになったのでよかったものの…。
ケフサとタカノの違いは上から見てもわからず、引っくり返して同定します。
細かい同定方法はここに書くと長いので止めておきます。両種は混生しています。

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おめぇなめてんのかとでも言っていそうな形相。
雑食性なので水槽の中では掃除屋さんとして大活躍する反面、
写真の個体のように大きな雄は、たまに魚を襲うことがあるので要注意です。
sさんの水槽にサンゴタツを入れたところ、すぐにこのカニさんがのしかかり、
ハサミでサンゴタツを摘んで食べ始めたのです。あの光景は未だに目に焼きついています。
そこからサンゴタツには「カニ。ゼッタイ。」という標語が誕生しました。
ようするに、泳ぎのうまくない魚は、カニさんに食われる。入れちゃダメってことです。

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雌です。紫色という不気味でセンスの悪い卵を抱えています。ゾエアだらけになります。
このカニさん飼育魚を食べることがあるので、入れないようにしてはいるのですが、
マガキの隙間に入っていることが多く、マガキを入れるとセットで付いてきます。
めっちゃ小さな個体も、飼育に強いため、まず成体になります。怖いことです。
寿命になって死ぬと、悪臭を放って水を汚します。すぐに取り除きましょう。
成体までならなかったのは、たいてい水槽の外でカリカリになって死んでいます。
他の汽水生物と比べて逃亡率が異様に高いです。結論として防ぎようがないです。
部屋でカニさんが採集できるようになります。屋内干潟と呼んでいます。
逆にこのカニさんが水槽に全くいないと、今度は掃除屋効果が低くなって、
底が徐々に汚い感じになってきます。このバランスが難しいんです。

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何でも食べます。それが売りであって怖いところ。脱皮した甲羅を食べています。
ヒトで言えば日焼けしてボロボロ落ちる皮膚を食べているようなものかな。
ちなみに、このカニさんは潮干狩りや磯で見たことあるぅと思った方、
それはきっとイソガニかヒライソガニ類だと思います。
このカニさんは汽水域や内湾奥部にいて、いわゆる海にはほとんどいません。

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小さな雄。イソギンチャク類はいつ記事にしようかと迷っているものです。
和名を早く付けるべきだと思って、キスイイソギンチャクと提案したら却下され、
捕った川の名前を冠にする提案は、生息地公開と地名はあかんと私が却下しました。
いつまで経っても進展しないので、そろそろ私がここで和名提唱してやるぅ。
話がそれましたが、汽水域でウナギ釣りするとたまにこのカニさんが釣れます。
せっかくの餌がハサミでボロボロにされたり、弱い当たりで根掛りするときは、
餌を障害物の隙間とかに運んで根掛りさせておられるようです。困ったカニさんです。
それでも何も考えていないようなところからくるたくましさが私は好きです。